無職の記(2)
ここ何日かは気分が良かったり悪かったりを繰り返している。
天気がジェットコースターのようにころころと変わるから然もありなん。夏の暑さがあったかと思えば、二月に逆戻りしたように寒い雨が降る。桜の開花は全国各地で最速だ。異常気象には辟易させられますね。
時折、無性に怒りを抱いたり、空虚な気分になったりもするけれども、概ね悪い傾向ではないだろう。これがある種の離脱症状であるということを知っているからだ。無論、昭和の文豪のように薬物中毒というのではない。
ここ一週間ほどは、ほとんど思いつきだけで動いていた。
ある朝、起きた瞬間に突然絵を描きたくなったので画材屋で絵の具と、カンバス、ペイントナイフを買ってみるとか。何年かぶりに毎日写真を撮ってはプリントアウトしてみるとか。その写真に詩をつけて便箋にしたためてみるとか。
まるで理性を失った夢遊病患者のよう。あるいはあてどもなく漂うくらげの如し。
毎日のようにただバスに揺られてるだけの時間を過ごすと、麻痺していた時間の感覚が少しずつもどってくる。それは時に、失われた時間を考えたりして痛みをもたらすけれども、生きている感覚を得るためにはある程度の痛みは必要だ。
毎日2000円分くらいは交通費に費やしているが、仕事も辞めたのに定期券を(市内は乗り放題なのである)更新したから半年は実質タダなので。もうすでに一ヶ月分のもとは取ったと言える。
もしも十万円の痛みと引き換えに楽園へ至るための切符を手に入れることが出来るのならば、それはずいぶんと安い買い物だ。黄金でさえこの輝きにはかなわないだろう。